「道路部建設課 多摩橋梁きょうりょう係」の仕事にZOOOOM IN!
公社の事業の仕組みや取り組みを深掘りし、公社についての理解を深めるこのコーナー。
「みちの仕事人」に登場した伊藤さんの上司であり“橋マニア”としても知られる紅林章央さんに、「道路部建設課 多摩橋梁係」の仕事について詳しく伺いました!
「道路部建設課 多摩橋梁係」が手がける、「橋梁架け替え・補修事業」って、どんな事業ですか?
A
橋は“一度つくれば永遠に使える”というものではありません。現在は5年に一度の定期点検が行われ、損傷状況に応じて補修されていますが、老朽化が進んだり不慮の災害で流されたりした場合、架け替えが必要になります。公社の橋梁架替事業は、橋の管理者である東京都などと連携し、新しい橋の計画から設計、工事までを担当しています。また、橋を「つくる」だけではなく、マンパワーやノウハウなどの不足に悩む都内区市町村自治体からの要望を受け、既設橋梁の補修設計、工事の業務を受託し、技術支援を行っています。
現在、「多摩橋梁係」が架け替えや補修をしている橋は?
A
青梅市の「御岳小橋みたけこばし」の架け替えに取り組んでいます。「御岳小橋」は、2019年の台風19号による多摩川の増水で被災。現在、新しい橋への架け替えを進めています。また、つい先日、青梅市の「好文橋こうぶんばし」の補修工事が完成しました。定期点検で塗装の劣化やボルトの抜け落ちが確認され、青梅市から協力要請があったため、公社で補修設計、工事などについて技術支援を行いました。
御岳小橋
タワーから橋桁をケーブルで吊る「プレストレストコンクリート斜張橋」で、国内では約20年ぶりとなる構造です。景勝地の自然環境に配慮し、地形の改変を抑えられる工法を採用。現代的なそのフォルムは、奥多摩の新たなシンボルになると期待されています。
\最先端の技術を詰め込んだ/
好文橋
全国でも珍しいアーチに鋼管を用いた「パイプアーチ橋」という特殊な構造で、長さも130mと比較的長い橋。既設塗装の除去に、騒音や振動などが生じない「IH工法」を東京都で初めて採用し(パイプアーチ橋としては国内初)、より安全により美しく生まれ変わりました。
\2026年8月に補修が完了/
橋の架け替えで、いちばん難しいことは?
A
橋を架けるときは、安全性や施工性、コスト面まで綿密に考える必要があり、多くの調整・作業が求められます。ただ、御岳小橋のような国立公園の景勝地では、それだけでは足りません。周囲の自然や景観との調和もとても大切です。橋を架けることで、それまでなかった「新しい風景」が生まれます。だからこそ、工事による地形の改変はできるだけ小さくしながら、観光資源にもなるような美しい橋を目指します。橋は、単なる「みちの続き」ではなく、新しい風景をつくる土木構造物。そこまで考え抜いて設計するのが、いちばん難しい部分かもしれません。
この仕事の「やりがい」を感じる瞬間は?
A
工事中は、通行規制や騒音などで地域の方にご不便やご迷惑をおかけすることもあります。だからこそ、工事が無事に終わり、開通し、人や車が行き交っている様子を見ると、「この橋が地域の暮らしを支えるんだな」と実感し、感動します。しかも土木構造物は、完成した瞬間がゴールではありません。そこから何十年、ときには100年以上も使われていくものです。自分たちが手がけた仕事が、未来の人たちの暮らしを支えていく。それこそが、この仕事ならではの大きなやりがいだと思います。
「橋梁架け替え・補修」をしないとどうなりますか?
A
橋は、毎日の通勤・通学や買い物、物流など、人々の生活を支える重要なインフラです。だからこそ、老朽化した橋をそのままにしておくと、重大な事故につながる可能性があります。最悪の場合には、崩落に至ることも。また近年は、激しい雨による災害も増え、御岳小橋のように増水によって橋が被災・流失するケースもあります。橋を架け替えたり補修したりすることは、私たちの暮らしを、永続的に安全で快適にするために必要です。
橋を歩くのが楽しくなる豆知識、教えて!
A
橋には、アーチ橋、トラス橋、吊橋、斜張橋など、さまざまな構造があります。地形や橋の長さ、地質などに合わせて、最適な構造が選ばれています。ちなみに、多摩川上流部には個性豊かな橋がたくさんあります。「この橋、なんでこんな形なんだろう?」と眺めてみると、散歩やお出かけがもっと楽しくなるはず。ぜひ詳しく調べてみてください。
\多摩川の名橋の一部をご紹介!/
奥多摩橋
深い渓谷をまたぐため、非常に高く大きなアーチを持つ。自然と美しく調和。
奥多摩大橋
平成初めの斜張橋で、直線的な形が魅力。御岳小橋の兄貴格!
氷川大橋
国内初のメラン工法で昭和初期に架設され、観光開発や道路網の近代化を支えている。
坪沢橋
スイスの著名な橋梁設計者マイヤールの設計を模した、国内唯一のマイヤール型コンクリートアーチ橋。
橋のことをもっと知りたい!どうすればいいですか?
A
公社では、勝鬨橋をはじめ隅田川の橋について、貴重な資料や関連情報等を展示・公開している勝どき橋の資料館を運営しており、橋の構造や歴史、維持管理について学べる機会があります。また、隅田川沿いを歩きながら橋を巡り、橋の構造や歴史、維持管理について学ぶ「歩いて巡る!隅田川橋梁・復興記念館見学ツアー」をはじめとする、「道路見学ツアー」や勝鬨橋の橋脚内部を見学するツアーなどのイベントも実施しています。いつも何気なく渡っている橋を、「つくる人・守る人」の視点から見てみると、東京の景色がちょっと違って見えるかもしれません。
答えてくれたのは
紅林章央さん
公社の道路部建設課 多摩橋梁担当課長。
文筆家でもあり、『東京の橋100選+100』など著書多数。
構成/衛藤理絵
